1.5cmの3Dプリントされたステーキは900ドル:バイオプリンティング技術で和牛のような構造を構築

By Guan Yu Lim

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1.5cmの3Dプリントされたステーキは900ドル:バイオプリンティング技術で和牛のような構造を構築

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日本の科学者たちは、筋肉繊維、脂肪繊維、血管を実際の肉に似たステーキのような構造に組み立てることによって、3Dバイオプリント和牛を作る方法を発見した。

従来、培養肉メーカーは、動物の肉の主要部分である筋肉の繊維を集めて培養肉を製造していた。

しかし、動物の肉は筋肉だけではなく、脂肪組織や血管の存在が肉にステーキのような構造を与える役割を果たしている。

培養牛肉では、本物のステーキに近い組成・構造のステーキを作ることは、脂肪細胞や筋肉細胞を一緒に整列させる必要から、まだ難しいとされている。

「和牛は脂肪分が多いため、霜降り構造になっています。そこで、3種類の牛細胞繊維(筋肉、脂肪、血管)を組み合わせて、本物の和牛に近い構造の和牛肉を作りたいと考えました」と大阪大学大学院工学研究科の松崎典弥教授は語る。

松崎氏らのチームは、この研究成果をNature​誌に発表した。

その仕組み

本研究では、42本の筋繊維、28個の脂肪組織、2本の毛細血管をテンドンゲル統合型バイオプリンティングで構築し、手作業で組み立てることで、ステーキのような肉を造り上げた。

詳しくはビデオで。

「食用肉ブロックから分離した3種類の牛の初代細胞からなる培養肉様組織を、本物の肉の構造に合わせてモデル化し、塊で作製したという報告は、我々の知る限り初めてのことです」と研究者らは語る。

培養されたステーキのような組織は、現時点ではまだ食べられない。松崎氏は、食品用ではない培地を使用したためだと説明している。

「今年度中には食用の肉を作れるよう、食品用の培養液への切り替えを進めています」。

松崎氏によると、1.5cmの肉を作るのに、約10万円(900ドル)かかったとの事。

培養肉市場

培養肉産業は近年、大きな投資を受けて成長を続けている。

イスラエルのAleph Farms社やオランダのMosa Meat社の培養牛肉、米国のEat Just社の培養鶏肉、そしてシンガポールのShiok Meats社や香港のAvant Foods社の培養魚介類は言うまでもない。

これまでのところ、これらの企業の中には、近々市場に出ることに興味を示しているところもあるが、シンガポールでの販売に向けて規制当局の承認を得ているのは、Eat Just社​の培養鶏肉原料のみ。

これら企業のうち、培養肉の分野ではまだ比較的新しい3Dバイオプリンティングを採用しているのは一部の企業だけである。

今年、3Dバイオプリントされたリブアイを発表したAleph Farms社もその一つで、来年にはその培養肉を市場に投入する予定である。

ステーキのような構造を実現するためには、細胞シート工学、細胞繊維工学、3Dプリントされた足場上での細胞培養など、さまざまな組織工学の技術が使われる可能性がある。

その中でも、3Dセルプリンティングは、拡張性があり、構造や組成を制御できるという利点があり、有望視されている。

松崎氏は、3Dバイオプリンティングを利用した製品の実用化は、今後3~4年のうちに始まると予測している。

 

出典:Nature

https://doi.org/10.1038/s41467-021-25236-9

「テンドンゲル統合型バイオプリンティングを用いた細胞繊維の組み立てによる塊肉様組織の設計」

著者:Michiya Matsusaki,ら

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