変革の時:トレーサビリティ技術で日本の「伝統的な」水産業を狙うAI企業

By Guan Yu Lim

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変革の時:トレーサビリティ技術で日本の「伝統的な」水産業を狙うAI企業

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日本の伝統的水産業の将来が切迫する中、カナダのAI企業が、注目の貿易コンテストで優勝した後、日本でのトレーサビリティ技術の販売を目指している。

2017年に設立されたThisFish社は、水産物のサプライチェーンをデジタル化し、世界の水産業にさらなるトレーサビリティと透明性をもたらすために、Tallyを開発した。

同社は、カナダ、米国、中南米、フィリピン、タイの顧客にサービスを提供しており、現在はマグロやキハダなどの人気商品を扱う日本の水産加工業者との連携に意欲を燃やしている。

「日本は米国に次いで二番目のシーフードマーケットです。また、シーフードは日本の重要なアイデンティティであり、文化でもあります」と、ThisFishのCEO兼共同創業者であるEric Enno Tamm氏は述べている。

「しかし、まだまだ紙ベースの伝統的な産業です。日本は人口減少や高齢化につながる人口動態の問題に直面しており、国内の生産性の問題や、若い従業員を業界に採用する上での課題も生じています。」

Tamm氏は2022年の日本進出を希望しており、現在、同社の技術を販売・導入するためのチャネルパートナーとの契約の真っ最中である。

チャネルパートナーは、相手企業の製品やサービスの導入支援を行う、ThisFishの場合は同社の技術を日本市場へ導入することになる。

「海外企業の多くは、文化や言語、人間関係などの理由で、日本市場に売り込むことが難しいと感じています。そこで企業がよく行うのは、技術を売り込み、日本での導入を手助けしてくれる現地パートナーを見つけることです。今、私たちがまさしく取り組んでいることです」とタムは語る。

今年初め、ThisFishは、日本とのコラボレーションに興味を持つ海外のスタートアップ企業を対象とした日本貿易振興機構(JETRO)コンテストの受賞企業の1社となった。

「JETROプログラムは、我々を展示会やサミットに参加させ、日本市場を理解させ人脈づくりの支援指導をしてくれました。」

また、ThisFishはこのたび、日本で事業化促進プログラム、けいはんなグローバルアクセラレーションプログラム・プラスの支援を受けることとなった。

課題への取り組み

Tamm氏によると、漁業のサプライチェーン、特に水産加工業者の間にあるギャップを目の当たりにして、Tallyの技術が誕生したという。

彼の家族はカナダで長年にわたり水産業に携わってきた。「サプライチェーンに携わる中で、もっと透明性を高めたいと思うようになりました。しかし、そのためのテクノロジーを構築しようとしたとき、実際にわかったのは、水産物メーカーや水産物加工業者がまったくデジタル化から程遠いという事でした。」

「漁師や養殖業者は通常、収穫物を加工業者に販売し、加工業者はそれを加工、包装して販売するというサプライチェーンの中で、加工業者は基本的にブロックのような存在だったのです」。

「最大の問題は、水産加工業者にあることがわかりました。そこで、特に東南アジアの小規模な加工業者だけでなく、大規模な加工業者にも展開できるような、汎用性と柔軟性のあるソフトウェアを構築することにしました。」

ThisFishは、サプライチェーンにおけるコスト削減とコンプライアンス向上のために、Tallyというソフトウェアを開発した。

特にデータの収集と管理において、「すべてが紙とマイクロソフト・エクセルに基づいており、企業はプロセスをリアルタイムに管理できないため、原材料のコスト管理に苦労していることがわかりました。工場で今何が起きているのか、正確に把握できていないのです。

なぜなら、すべてのデータは紙であり、紙のデータをエクセルに取り込むのに1~2日かかることもあるからです。」

「多くの会社は、信じられないかもしれませんが、いまだにエクセルのスプレッドシートを使って在庫を管理しています。その結果、冷蔵倉庫に長く保管されていたために在庫の有効期限が失効し、損失を被ることがよくあるのです。会社は、手遅れになるまで、処理に問題があることに気づきません。」

「ThisFishのソフトウェアは、原材料と最終製品の両方において、生産、品質、在庫をリアルタイムで管理することができます。「食品ビジネスのマージンは非常に薄いので、このような原材料の管理は非常に価値があります。ですから、歩留まりを少しでも確保する、廃棄物を減らすことができれば、多くのお金を回収することができるのです。」

例えば、ThisFishが協力したある水産加工業者は、出荷用コンテナの梱包をしっかり管理出来ていなかった。

「この会社の作業員が誤って出荷用コンテナに詰め込みすぎて、年間50万ドル以上の損失を出していました。当社のソフトウェアは、出荷用コンテナに入れる順番待ちのパレットをすべてQRコード化し、その結果、ロスをゼロにすることができ、年間約50万ドルを節約することができました。」

「もう一つのコスト削減は、機会費用です。つまり、トレーサビリティがしっかりしていないと、フェアトレードやMSC、ASCの要件を満たすことができないのです。

一部の顧客への販売機会を失うことになります。ヨーロッパへの輸出や、強力なトレーサビリティとコンプライアンスを必要とする顧客への輸出ができないかもしれません」とTamm氏は語った。

消費者が購入する製品に透明性を求める市場や規制の要求が高まっている。より多くの消費者が、購入する製品が持続可能で社会的責任を果たしているかどうかを知りたがっており、各国政府もこれに耳を傾けている。

12月、日本の国会で、違法、無報告、無規制の水産物の輸入を禁止する法律が可決された。この種の法律は、2010年にEUが最初に可決し、その後2018年に米国の水産物輸入監視プログラムがこれに続いた。

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