本研究は24年間の追跡調査を伴う、非感染性疾患および高齢者におけるその傾向の前向き観察のための国の統合プロジェクト(NIPPON DATA 80)の一部である、1980年全国栄養調査で収集したデータに基づいた。
対象は8702人で、そのうち約4,873人(56%)が女性であった。全ての参加者には、世帯単位に少なくとも一人の家族があり、年齢は30歳から79歳の間であった。
塩分摂取量は、3日間にわたる計量記録方法を使用して世帯ごとに評価され、世帯員が消費した全ての食品と飲料が記録された。
「アジア諸国では、家庭で加える調味料や食塩が塩分の主な摂取源となっている」と、本研究の著者らは述べている。
「この研究では家庭の塩分摂取レベルは、各家庭における総エネルギー摂取の1000kcal当たりの塩分消費量と定義し、平均摂取量は6.25 g/1000kcalであることが解った。」
世界保健機関(WHO)のガイドラインによると、成人は血圧を下げ、心血管疾患、脳卒中、冠動脈性心疾患のリスクを減らすために、塩分摂取を5g/日未満にすることが推奨されている。
コックス比例ハザード比(HR)に基づいて、特定の要因(塩分摂取量)がイベント(死亡など)の発生確率にどのように影響するかを予測するために使用され、家庭の塩分摂取量が2g/1000 kcal増加すると総死亡率(HR値で1.07、死亡の確率が7%高いと想定される)、心血管疾患(1.11; 11%)、冠状動脈性心臓病(1.25; 25%)、および脳卒中(1.12; 12 %)が大幅に増加した。
「これらの結果は、家庭での塩分摂取量は日本人集団における総死亡率、心血管疾患、冠動脈心疾患、および脳卒中死亡率の長期リスクと有意に関連していた」と著者らは述べている。
反対側にあるもの:果物、野菜、魚
NIPPON DATA80のデータを用いて実施され、同じ研究者の大部分が参加した別の研究では、元の1980年のデータからの29年間の追跡調査でも、塩分摂取量の増加と関連した心血管疾患(CVD)死亡率のリスク増加が明らかになった。
「CVD死亡リスクは、野菜、果物および魚の最高摂取量と比較して、塩の最低摂取量で有意に上昇した。」と研究者らは述べている。
「対照的に、野菜、果物、魚の高い摂取量と低い塩分摂取量は、脳卒中による死亡リスクの低下と有意に関連していた。」
研究者らはまた、HRsに基づいて食事パターンのヒートマップを構築し、(野菜、果物、魚の摂取量が少ない+塩分摂取量が多い)食事パターンが最悪の人のCVD死亡リスクは、低塩、高野菜、高果物、高魚摂取の人よりも2.87倍高いことを見出した。
この研究では他の一般的な食品も評価されたが、心疾患による死亡リスクの増加との関連は認められなかった。
穀類、大豆/大豆製品、乳製品および肉の消費レベルとCVD死亡リスクとの間に有意な関連は認められなかった。
「日本人は長寿であることが知られているが、塩分の摂取量が多いこともよく知られている」と著者らは述べた。
「高いとは言え、日本の塩分摂取量は過去数十年間で著しく減少しており、この塩分摂取量の減少は、血圧の低下を通じて脳卒中リスクの減少に寄与している。また、これらの変化は日本の長寿命に関連している。」
研究1:日本における家庭の塩分摂取量と長期の総死亡率および心血管疾患死亡率との関係:NIPPON DATA80
出典:Hypertension Research
著者:Shima, A.等
https://doi.org/10.1038/s41440-019-0349-9
研究2:日本における食事因子による心血管リスク評価チャート:NIPPON DATA80
出典:Circulation Journal
著者:Kondo, K.等